:ある男性の、ある女の子分析―――有能執事ワタリ編(第二章時)














他人と触れ合って、あんなに穏やかな表情もできるのかと正直驚愕していました。











竜崎の希望で訪れた日本。

例の私立探偵がいる都内。



彼女の行きつけのカフェに竜崎を送り、私はホテルで待機していました。

現れたのは、以前、私が偶然を装ってあのカフェに行った時と同じ少女。



予想もし得なかったことに、彼女は驚いていたようだったけど、決して口には出しませんでした。





その後、竜崎の部屋でついに我慢できなくなったらしい彼女は、

驚くほどの大声で自らの疑問を叫んでましたが。


・・・・・・そういえば、竜崎の大笑いを見たのも思い返せば初めてでしたね・・・。








それから彼女は、頻繁に竜崎を訪ねてきてくれました。


はきはきと自らのことを話し、そして竜崎や私の話は真剣に聞いてくれるとても真面目な子です。



私立探偵としての彼女とは全く想像もつかない明るい人柄でしたが、

やはり、あの私立探偵だと思ってしまうような聡明さも垣間見えて。






ふと、考えてみました。


髪や目の色は普通の日本人と異なる色とは言え、

染髪やカラーコンタクトも珍しくない昨今、よく考えるとそれほど特筆するようなことではないでしょう。



何処にでもいるような、普通の少女です。



しかし、いつも真っ直ぐと背筋を伸ばしてしっかりと前を見据えた彼女。

まだ10代ながらも、はっきりとした意志の強さ。





他人に執着しない竜崎が興味を持ったのもわかります。








竜崎の立場上、このままずっと彼女と居ることは叶わないでしょう。

しかし、これ程までに話の弾む彼女と今後とも長い付き合いを続けるために、連絡先くらいは残していくはずだ・・・



そう、思っていたのですが・・・、ある日、竜崎は彼女から離れると私に告げました。

何も残さずに姿を消す、と。




・・・・・・竜崎が何を思っていたのか、全く見当がつかないわけではありません。



しかし・・・正直に申しますと、私は納得はできませんでした。



彼の本心では、離れたくないということが目に見てわかります。

あんなに思いつめたように別れるほどの理由なんて、ないでしょうに。




貴方はたしかにLです。

常に目に見えない敵からの敵意を受ける、極秘の存在です。

彼女に余計な被害を与えるまいとして、離れようとする気持ちもわからなくはないですが・・・、


・・・貴方が心配するほど、彼女は非力ではないと私は思います。

あの非凡な能力で、自らに降りかかってくるであろう災難へ立ち向かうことができると・・・思うのです。




そう告げようとしたのですが・・・さすがに余計なことだと思い、この意思は私の中に留めました。





あのパーティの後、すっかり酔いつぶれてしまって眠ってしまった彼女を部屋に寝かせ、

そのまま去ろうとしましたが・・・、竜崎は、先に下りるように言いました。




・・・・・・やはり、告げた方がよかったのでしょうか?

そんなに名残惜しいなら、彼女との繋がりを断たなくてもいいでしょう、と。


しかし、それはやはり立ち入ったことでした。









もしも、いつか竜崎が彼女とのコンタクトを望んだときの為に、

彼女の居場所を常に把握しておくことにしますか・・・。




それはきっと万に一つの可能性。

竜崎には知らせない、私の余計な心遣いです。