:ある男性の、ある女の子分析―――私立探偵Lこと竜崎編(第二章時)














ほんの興味本位で、彼女にもう一度逢ってみたかった。


あの笑顔にもう一度だけ。






・・・・・・それだけのはずだったのに。








私立探偵をいう肩書きを持った女性ではなく、等身大のままの少女。



素直に笑い、遠慮もなく怒る彼女は、私にとってとても新鮮で興味を持つ対象だった。






幾多の事件と向き合ってきて、多くのことを知っていると思っていたが・・・、

彼女と過ごすことで、様々な自分の無知を思い知った。

自分が身につけてきた様々な能力も大して役に立たないことを思い知った。




どんなに小さな証拠も見逃さない鋭い洞察力も、

犯行の動機を推測する心理学の知識も、

先の先を予測し、事件を解決に導く為の推理力も、




彼女の前では、そんなものはまるで役に立たない玩具になってしまってたんだ。







こんな、人間的に何も取柄のない自分へ向けてくれるあの笑顔。

本当に、周りの友人たちへ向けるものと変わらないだろうものを、惜しみなく私に与えてくれた。





その笑顔をずっと見ていたいと思った。

ずっと話していたいと思った。


・・・ずっと側にいたい、と、そう思ってやっと私は我に返った。








私は何をしているのかと。








私はLだ。

何かに執着するなんてあってはならない。

それは、私の為でもあるし同時にそのものの為でもある。

それに、素性も明かせない偽りの存在のまま、彼女に嘘を吐き続けたくもない。





だから、離れようと決めた。






彼女に災難が及ばないように、これ以上、一緒にいると離れられなくなるから。




最後の思い出が欲しくて、誘ったパーティで本当に美しい姿を見せてくれて。

そのパーティで、優秀なパートナーを務めてくれて。


彼女は酔いつぶれて倒れてしまったけど。







抱きかかえた彼女の感触はきっと忘れられない。

あの穏やかな寝顔はきっと忘れられない。





・・・・・・引かれる様にほんの一瞬だけ重ねた唇の感触もきっと忘れられない。






卑怯な去り方だとはわかっていた。


言い訳するつもりはない。






・・・どうか、余計な気持ちが彼女に残らないように。









彼女を想うこの気持ちは、私だけが持っていればいい。