|
彼が厳しく怒ったことなんてない。 いつだって私を気遣うように優しく抱きしめて、私のしてほしいことを全部してくれる。 これ以上私を甘やかさないで。 あなたから二度と離れられなくなるから。 12.限界まで甘やかす 「きゃ、あ・・・んっ!そこ・・・・、だめ・・ぇっ!」 「大丈夫」 暴れようとする私の足をしっかりと割り開いて、彼はそこに顔を埋めている。 そんなところを舐めねぶられる行為なんてそれまで考えたこともなかった。 熱い舌が差し込まれて、頭の奥がちかちかとフラッシュする。 柔らかく歯を立てられてそこを吸い上げられる感覚に体中が悲鳴をあげる。 自分が何を見ているのかわからない。 「や・・・っ、アイバ、・・・っ」 私が私じゃなくなってるような感じで怖くなる。 乱されたシーツを強く握りしめていた右手は、大きな手に包まれた。 優しく手を握られたのに反応して強く閉じてた目を開けると、 そこには視界いっぱいに彼の端整な男らしい顔。 その不敵に笑んでいる蒼い瞳を直視できなくてまたぎゅっと目を閉じると、唇にあたたかい感触。 次いで口内に侵入してくるものから逃げようとするけど、それもかなわない。 「っふ・・・・・、んぁ、ん・・・っ!」 右手はしっかりと握られたままで、彼の片方の手はもどかしく下肢をなぞってる。 止まることのない愛撫にたまらなくなって左手で彼の胸に手をやると、 よく鍛えられてる厚い胸筋に触れて恥ずかしくなった。 音を立ててキスを落とし、私の両手を首にまわさせる。 彼の顔を見ることができなくて俯いたままの私の髪を一度だけ梳いた。 「挿れるぞ」 彼の低い声を心地よく感じてるうちに、下肢に熱いものが一気に滑り込んだ。 「っや・・・ん・・・っ!!ぁあ・・・っ!」 抱き起こして、息を切らす私の背中をゆっくりと擦りながら、どんどん奥に入り込んでくる。 まだ慣れない。 痛い。 怖い。 ・・・・・・・・・だけど、それ以上に、彼の行為はとても優しいの。 「あぁんっ・・・・!、あ、ああっっ・・・!!」 一気に追い詰められて真っ白になった視界。 ぐったりと脱力する私をしっかりと抱き止めてくれた。 大きな手で頭を撫でられる心地よさを感じながら、温かい胸にしがみつく。 何も変わらないはずの私の部屋なのに、違って見えたのはどうしてだろう。 こうして体を重ねるようになって、まだ日は浅い。 ・・・・・・こういう関係になってしまうなんて、想像もしてなかった。 ウエディと一緒に訪問してきたときは、ひどく胡散臭い人だとばかり思ってたのよ。 詐欺師のアイバー。 首が痛くなるくらい見上げないと、顔を見ることもできないくらい背の高い人。 私よりも年は一回りも上、欧米人らしい金髪碧眼の端整な風貌。 お昼に会うとちゃんと顔は整ってるけど、こうして一晩越えると金色の無精髭が目立ってくる。 彼についてはまだまだわからないことばかり。 本名だって知らない。 くわえて・・・こういう行為の理由も、私にはまだわからない。 彼が私を本当に愛してるのか、そして私が彼を愛してるかなんて・・・まだわからない。 あんなに優しい顔で私を抱いてくれるのはどうしてかって考えてしまうの。 それを聞こうとしても、あの優しい瞳に見つめられると胸の奥が詰まってしまって何も言えない。 だけど・・・・・・、彼の側はとても温かくて、安心しきってしまうから。 いけないんじゃないかと思ってもつい、その温もりを求めてしまう。 そして、どんな時だって彼は私を拒絶しない。 私がぼんやりと目覚めたのはもう日も高い頃だった。 閉めきったカーテンの隙間から漏れる光がうざったい。 ああ、新しく作ってたハッキング用のフェイクプログラム、今日中に仕上げたかったのにな・・・、 ・・・・・・体が重くて無理だ。 アイバーは眠ってる私に背を向けてベッドサイドに座り込み、今日の朝刊を読んでいた。 あれからずっとそこにいたのかな。 本来なら私しか眠らないはずの、こんなに小さいベッドだものね。 「アイバー・・・・・・」 「ん?起きたか」 顔だけこちらに向けて、彼はそう言った。 下にジーンズしか履いてない姿。 上半身裸の男の人を目の前にするなんて、昨夜のこともくわえて恥ずかしすぎる。 それで動揺するのも何だか悔しくて、口を尖らせた。 「・・・お風呂入りたい」 「もう準備してあるぞ」 「・・・・・・・・・立てない」 下腹部に残る鈍い痛みを残した張本人をなじるように、彼を睨みつけた。 「ははっ・・・悪い」 だけど彼はおかしそうに笑い、新聞をばさっと置いて振り返った。 何もまとってない私の体にぐるっとシーツを巻きつけて、いとも簡単にひょいっと抱き上げた。 ・・・私、そんなに華奢で軽いとは思わないんだけど、彼はちっともよろけたりなんかしない。 平然とした顔でこれまた狭いバスルームへと向かう。 最初の頃はひどく慌ててた。 この、所謂「お姫さま抱っこ」というものに。 地に足がついてない感覚というものがどうも慣れなくって。 恥ずかしさも相まって暴れてたんだけど、今では心地よく揺れる感覚を大人しく感じてる。 きれいなお湯が張られてるバスタブにそっと下ろされた。 熱すぎずぬるすぎない、心地いいお湯に包まれてふぅ・・・っと溜め息をつく。 息をついたところで、アイバーは泡立てたスポンジを手にして私の腕をとった。 多めに張ってあったお湯が軽く溢れて、彼のジーンズを濡らしている。 「アイバー・・・濡れちゃうじゃない」 「構わないさ」 腕を引こうとしたけど、片手で遮られてしまう。 優しく微笑む顔をまともに見ることができない。 抵抗してもきっと放してくれないと思ったから、大人しく身を任せた。 静かなバスルームに水音だけがいやに響く。 アイバーの手は腕から首元へ、胸、お腹と下りていく。 ・・・その感覚にぞわっとするけど、彼は至って真面目な顔でスポンジを滑らせていくから。 だから、私も妙なことを考えたりせずじっとしている。 こんな私をここで襲おうとしたら、お風呂のお湯で遠慮なく攻撃してやるんだから。 そんなことをひっそりと思いながら・・・、ふと訊ねてみた。 「・・・アイバーにとって・・・私って一体何?」 「は?」 「聞こえなかったの? どんなターゲットだって必ず落とす天才詐欺師のアイバーさんにとって、 このしがない女子高生の という小娘は一体何なんですかー?って聞いたの!!」 本当に可愛くない子供だわ・・・、 ・・・・・・かっとして、ついムキになって大声が出た・・・。 バスルームに反響した大声に、彼は驚いたように眉を寄せる。 「ひどくご機嫌斜めだな、今日のは。 ・・・・・・そんなに痛かったか?激しくしないように気をつけてるんだが」 スポンジを滑らせる手を止め、肩を抱きしめてきた。 こめかみに唇を寄せて、彼はこう答えたの。 「そうだな・・・、愛らしいがコンピュータ関係は驚くほど有能で、 どんな時だって目の離せない、魅力的なお嬢さんだな」 「・・・・・・嘘つき」 彼への悪態がまた、つい口をついて出てしまった。 その言葉に、アイバーは困ったように笑ってみせる。 ・・・・・・その顔が少しだけ寂しそうに見えてしまったのは・・・、きっと気のせいよね。 「本音だがな。じゃあ、どんな嘘だったらは納得するんだ?」 「・・・・・・・・・ごめんなさい」 だけどさすがに失礼なことだった。 素直に謝ったけど・・・、彼へ向ける視線はまだ険しいかも。 「アイバーのせいよ」 「俺の?」 きゅっと唇を噛む。 バスタブの中で膝を抱えて、ぽつりと呟いた。 「・・・・・・・・・あなたなしでは生きられなくなったかも」 「・・・それは光栄だな、告白か?」 「何が光栄よ。私が一人になったらどうするの。アイバーのせいなんだから」 「一人にしなければ、問題はないだろう?」 肩を抱いたまま、耳元で低く囁かれる言葉に目頭が熱くなりそうだった。 「・・・・・・」 「君が望む限り、側にいるさ。約束する」 「・・・・・・私が望まなかったら?」 「時と場合によるな。 本気でが望んでないとわかったら離れるだろうしな。 まぁ・・・そんなことは絶対にないと、自惚れたら駄目か?」 唇を掠めるキスをされて睨みつけてしまったけど、彼の男らしい笑顔に毒気も抜かれてしまう。 ざばっとお湯から上げられて、バスタブの縁に座らされる。 「ほら、眉間に皺を寄せるな。 せっかくこんなに可愛いのに。 だが・・・・・そうやって怒った顔もまた魅力の一つだな」 今度は額に優しい口づけを落とされる。 そして、手早く私の体を簡単に拭いてしまう。 バスタオルを軽く巻かれて、また抱き上げられた。 ソファに下ろされて、もう1枚バスタオルを頭の上から被せられた。 リビングの時計はもうお昼過ぎを指している。 「、そろそろ腹減らないか? ユニオンスクエアに美味いカフェレストランがあるから、奢るぞ」 「・・・・・・立てないって言ったじゃない」 「ああ、じゃあ俺が何か作るか? ほど料理はうまくないが。何が食べたい?」 ぼやいた私にそう言ったアイバーは、軽く首を傾けて腕を組んで。 私の我侭に応じようとしてくれる彼に・・・何か、悔しくなったの。 「・・・・・・・・・・・いいよ、もう! 外に出て何か奢って!!気合いで立てるから!!」 腰をかばいながら立ち上がった。 内側から感じる鈍い痛みに眉を寄せて、口許を引きつらせる。 着替えるためにクローゼットを目指すけど、気をつけないとぺたんと座り込んでしまいそう。 「本当に面白いお嬢さんだな」 ふと振り返って見たアイバーは、くっくっとおかしそうに笑ってる。 ちょっと羨ましい金髪に、深い蒼の瞳。 この狭い部屋には不釣合いなほどの長身に、何か運動でもやってるのか、引き締まった体躯。 教養は深いらしく私の好きなクラシックにも造詣があって、頭もいい。 こっちでは私のお父さんみたいに、日本語での会話も弾む人。 前までは何とも思ってなかった。 まぁ普通に格好いい人で、割と話も合う楽しい人だなってくらいしか認識はなかった。 だけど、こうして関係を持つようになってそれらの全てが気になりだして。 彼もこんな我侭な私を受け入れてくれて。 ・・・・・・・・・このままじゃ・・・、何かまずいんじゃないかな。 ・・・ねぇ。 私の我侭なんて、聞き流してくれていいのに。 私・・・・・・まだまだ子供だから、あなたについ甘えてしまう。 自分の足で立てるような大人の女性にはなれないよ。 「どうした、?・・・どこか痛むのか?」 「・・・・・・何でもない。大丈夫。 待ってて、着替えるから」 もう少しして、大人になれたら・・・、きっと何かが変わるかな。 だから、それまでは。 お願い。 ・・・・・・私を放り出さないで。 クローゼットからリボン付きの黒いジャケットシャツと、 デニムのスカートを取り出して、まだあまり思うように動かない体で着込む。 ドレッサーに映ってる不安な瞳をした私を一瞥して、鏡の前から離れる。 リビングにいたアイバーもカジュアルな黒のジャケットに着替えてしまってた。 「お待たせ!ホントにおいしいの?そのレストラン。 あ、ユニオンスクエアに行くなら、ソーホーのケーキ屋さんでケーキ買って帰りたいんだけど」 「この前のケーキ、お気に召したのかな?」 「うん!」 不安を振り払うように笑う私。 この人はそれに気づいてるんだろうか。 |
|
あなたは優しいんじゃない。 とても残酷な人よ。 真綿のようにじわじわとしめつけられる優しさで私をどこまでも甘やかす。 逃れることはもうできない。 今あなたから離れたら・・・、私は変わらずに毎日を生きていくことができるのかな。 優しく、甘い言葉と温もりをたくさんくれる、あなたはとても酷い人。 心地よさと快感にいつまでも浸っていたいけれど・・・、それが怖いの。 限界まで甘やかされ、もしも放り出されたとき・・・私に残るものは一体何? |