笑いかけて。
抱きしめて。
その温かさと微笑みが、何よりの幸せ。
10.微笑み掛ける
特筆すべきことは何もなかった。
彼らにとって、特に意味のあるわけでもないただの一日。
独立記念日が近いニューヨークの空は青く澄みわたり、
蒸し暑い夜には、暗雲ひとつない空に青白い月が浮かぶ。
そんな頃の、ただの一日だった。
夜も更けた頃、
いつものように、二人は並んで座りそれぞれの時間を過ごしていた。
彼女が作ったパスタを食べた後、彼がコーヒーメーカーのスイッチを入れて。
熱いコーヒーをソファのサイドテーブルに並べて置いて、静かな時を過ごしていた。
彼女は文字の小さく分厚い洋書を広げて、彼は次の仕事の詳細の資料を広げて。
お互いが触れるか触れないかの距離をとって。
「・・・・・・ねぇ、アイバー」
「何だ?」
部屋に満ちていた静寂は、彼女の声によって打ち消される。
はふと本を閉じ、すっとアイバーにもたれかかった。
ターゲットの学歴経歴に目を通していたが、その柔らかい重みにアイバーはふと手を止める。
「どうしたんだ?」
「んーん・・・・・・」
もたれかかったまま、ぼんやりとそう呟いた。
いつもの彼女らしくない態度にアイバーは少なからず疑問を感じる。
体を重ねる時は、まだ幼さをとどめた顔に扇情的な表情を浮かべるが、
普段は基本的に、いつでも明るい元気な少女だ。
本を読んだり、コンピュータに向かう時の真剣な顔は
彼と同じ世界に足を踏み入れたプロのそれでも、まだ10代の少女であることは否めない。
「・・・・・・・・・」
一言も漏らすことなく、はもたれかかったまま。
資料を放り出し、アイバーは右腕を伸ばしての肩を抱いた。
すっぽりとおさまってしまう小さな体。
本人は「自分は至って標準体型」だと言い張るが、
大柄なアイバーにしてみれば、気をつけないと折れてしまいそうに華奢だとしか思えない。
「・・・・・・どうしたんだ?」
「・・・んーん・・・・・・」
腕の中におさまった彼女に頭上から優しくもう一度訊ねてみても、の返事は変わらない。
もたれて俯いた顔に、長めの髪がかかって表情を窺い知ることはできない。
「参ったな。これでも、女性の心理を読むことは得意なんだが」
「・・・・・・残念でした。私は女性じゃなくて子供だもん」
軽く息を吐き、明るい口調でアイバーがそう言うと、その体勢のままで憮然としたような声でが答える。
そんな彼女の頭にそっと口づけ、指通りのいい髪を梳いてやりながらアイバーは続ける。
「には、俺の今までの常識を覆してくれるような魅力があるってことだ。
君という女性を深く理解する為に、今日はどうしてしまったのか教えてくれると光栄だな」
素直に笑う彼女も、年相応に拗ねてみせる彼女も、全てがアイバーにとっては新鮮で。
ふとした時に見せる大人びた表情も、彼に抱かれてベッドの上で喘ぐ艶やかな表情も。
アイバーが彼女の全ての表情に向けるのは、愛しい人への優しい微笑み。
仕事の延長線上の偽りだと他人に言われようが、彼にとってはそれが真実。
出逢った頃とは比べ物にならないくらい、
彼にとって彼女の存在は大きく確かなものに変わってしまっていた。
「駄目か?」
答えないに、もう一度静かに聞いてみる。
微かな衣擦れの音をたて、彼女をゆっくりと抱き込んだ。
「・・・・・・・・・、違うの・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・理由なんてない。
ただ・・・・・・、」
そこで言葉を止め、はきゅっとアイバーのシャツにしがみついた。
長い髪に顔を隠してしまってるが、漂わせる雰囲気は何となく察しがつく。
「・・・俺の都合のいい方へとってもいいのかな?」
「・・・・・・気づくの遅いよ、バカ」
小さく悪態をついたは彼のシャツを掴んだ手を握りしめ、その厚い胸をどんっと叩く。
アイバーはその小さな拳をとって自分の口許へ持っていき、音をたてて優しく口づけた。
「愚鈍な振る舞い、許していただけると光栄の至り」
手を取られて反射的に顔を上げた彼女が見たのは、穏やかに瞬く深い海の色。
アイバーは両手で彼女の顔を包み、ゆっくり顔を近づける。
陽を受けると生き生きと輝く柔らかいブラウンの瞳が不安げに泳ぎ、微かに潤んでいる。
引かれるようにそっと唇が重なった。
ふっくらした唇を何度も啄ばむように軽く吸い上げる。
口づける合間に酸素を求めて息を呑むをなおいっそう強く抱きしめる。
「ん・・・っ、あ・・・」
が自分から口づけに応えるようになったところに、アイバーは舌を差し入れてやった。
口内の異物にはほんの少しだけ身を固くしたが、優しく絡められる舌に体中の力が抜けていく。
「ん、ぅ・・・っ」
決して激しくないキス。
ゆっくりゆっくりと丹念に口内を侵していくキス。
これが、アイバーの愛し方。
ベッドの中でもそうだ。
泣きそうに顔を歪め必死でしがみつくを、彼が優しく宥めながら突き上げる。
常に相手を気遣い、望む快楽を与えることを常としているアイバーに、はいつも酔わされる。
「本当に・・・・・・可愛いな・・・」
「や、・・・っふ・・・っ」
唇を軽く離してそう告げ、また深く舌を絡めとる。
は固く目を閉じ、自身の肌触りのいいシフォンの服の裾を掴んでいた。
だが、ぐっと背中に腕を回され、
下に着ていたインナーのキャミソールと一緒にトップスを脱がされてしまい、閉じてた目をはっと見開く。
その次の瞬間には座ったままひょいっと持ち上げられ、はアイバーの軽く開いた足の間に座らされていた。
「こ、こで・・・!?」
「ベッドが塞がってるじゃないか」
先日、の父親が大量におくってきた服で埋めつくされているベッドを指さした。
続いて自分の着ていた薄いシャツを脱ぎ捨て、よく鍛えられた体が晒される。
彼女が戸惑っている間にライラック色のブラジャーのホックがいとも簡単に外され、
アイバーの熱い手が胸のふくらみに直に触れてきた。
「や・・・っんぁ・・・っ!」
既に固くなっている突起を指先でくるくる撫で回すと、頭を振って声を押し殺す。
のけぞった首筋に痺れるような痛みを残して痕がつけられる。
続いて肩口、鎖骨と口づけられる間に、乳房を弄っていたアイバーの片手は彼女の下肢に伸びていた。
固く足を閉じていたが、スカートの下からゆるゆると太ももを撫でられる感覚に彼女は少しずつ足を開いていく。
「・・・・・・本当は、こういう関係に慣れてないんだがな」
「は・・・っ!?」
後ろから抱き込んだまま首筋の至るところに口づけていたが、その唇が真っ赤になっているの耳をくわえた。
敏感な耳をねっとりと舐められ、そんな至近距離から低い声がダイレクトに体中に響き渡る。
「一度、体を重ねた女性とこんなに長い期間一緒にいるなんて、今までなかった」
「あ・・・っん・・・だ、め・・・っきゃあ・・・っ」
言葉は穏やかで優しくても、彼の両手はの敏感なところを弄りまわしている。
左手は赤くなってしまった突起を摘んだり大きな掌でゆっくり揉みあげる。
右手は既に衣服の意味をなしていないスカートの下から、下着をずらして指を差し入れている。
熱い内壁を傷つけないように指を動かし、親指で敏感な陰核を押しつぶしてやると一層高い悲鳴をあげる。
「・・・少し酷いことを言うと・・・、正直、本気じゃないと思ってたさ。
初めて君を抱いたとき」
「っ・・・、や、ぁ・・・っっ」
長い指がの最奥にたどりついたところでもう一本増やすと、彼女は苦痛に顔を歪めた。
目尻に浮かんだ涙が零れるのを見ながらアイバーは更に言葉を続ける。
「この俺が、一回り以上も年の離れたお嬢さんにこんなに焦がれるなんて・・・、
ウエディにまた嫌味を言われてしまうな」
「・・・ぁ・・・っ、ア、イバー・・・っ!」
いつの間にかの両手は、乳房を揉みしだいているアイバーの左手を強く握りしめていた。
まるで、行為をせがむような彼女の行動にアイバーの熱が高くなっていく。
腕の中に抱き込んだまま、甘い口づけを一つ落としてやった。
アイバーに背後から抱きしめられ、足を割り開いていたが再び体を持ち上げられる。
180度回転させられ、真正面を向かされた。
両腕をアイバーの首にまわされ、恥ずかしさのあまり腕を引こうとするが、それをやんわりと止められる。
「・・・・・・今まで一度も言ってなかったな」
「え・・・?」
「愛してる」
こつん、と額を当てられ、顔にかかる金髪からのぞく真っ直ぐな蒼の瞳で告げられた言葉。
「わ、たし・・・・・・」
彼の仕事を考えて、この言葉を嘘だと決めつけるのはとても簡単なこと。
たとえ自分が受け入れたとしても陽の当たる関係になれないのは明らか。
だけど・・・・・・、この温もりを手放したくない。
この微笑みが自分の側からいなくなってしまうなんて考えたくない。
それは果たして、間違った選択なのか。
どう答えたらいいのかわからないは真正面のアイバーの顔を直視できずに俯いてしまった。
「無理に答えなくていい。
受け入れてくれようが拒絶しようが、いつか聞かせてくれたらそれでいいさ。
だが・・・、これが、俺の気持ちだ。
それも嘘だと言われようが構わない。何度でもこの真実を君に告げよう」
そう言いながら彼女の足を持ち上げる。
はアイバーの首にまわした腕に力をこめ、ぎゅっと目を閉じた。
しがみついてきたの髪を撫で、持ち上げたところに一気に自身を挿入した。
「っっ・・・!ア、イバー・・・や、ああっ!!」
持ち上げられた腰を動かされ、狭いところにどんどん押し入ってくる。
何度となく行為を続けてきて慣れてきたとはいえ、やはりまだ年若いには未知の痛さがつきまとう。
しかし、痛さとともにあるのは間違いなく快感。
内壁を擦り、突き上げられると甘い痺れが体中を走る。
その刹那の快楽を、本能が求め続けている。
「ぃ、っ・・・、や、・・・ぁ」
膝を折ってアイバーの上に馬乗りになり、何度も腰を上下させられる。
自身の体重もかかり、いつもの柔らかいベッドの上よりも激しい行為に感じられる。
声を出すまいと唇を噛み、思わず広い背中にぐっと爪を立てた。
料理したりピアノを弾くことを趣味としている為、の爪は普段から短く切りそろえられてはいる。
だが、快楽に耐えようと力をこめるので、アイバーの背にはうっすらと爪痕が残っていた。
「そう・・・大丈夫だ、・・・・・・」
背中に鋭い痛みを残した彼女の髪を撫でながら静かに囁く。
その甘い言葉は、の体を麻痺させるには十分なもので。
顔をアイバーの肩に埋めて、今にも破裂してしまいそうなもどかしさから解放されたいとしがみついた。
「ん、・・・あ、ぁっ・・・」
密着したの吐息を直に感じ、切ない喘ぎを耳にしてアイバーも自身が昂ぶっていくのを感じる。
息を吐き、の腰を持ち上げる腕に力を込め最奥まで一気に突き上げた。
「やあぁぁぁっっ!!」
与えられた刺激に応え、狭い内壁がビクビクと収縮し蜜が溢れ出す。
はじけたばかりの中でアイバーが動くたびにそれが潤滑油になり、更なる快楽を求め始める。
アイバーはしがみついて息を乱しているの顔を上げさせ、深く深く口づける。
迷わず口づけに応えるを強く抱きしめ、熱を帯びた自身を再び突き上げた。
確実に何かが変わった二人の想いが交錯し、昇華していく。
摩天楼輝く、真夏の夜はまだ続く。
特筆すべきことは何もなかった。
彼らにとって、特に意味のあるわけでもないただの一日。
だったけれど。
お互いが本当に心から求め合った日。
お互いのその存在を愛しく、大切に思えた日。
明日目覚めたら、隣にいるこの人へ一番に微笑みを。
同じことを思いながら眠りにつける幸せな日々が、どうぞずっと続くように。
|
今回、ちょこっと補足。
↓
↓
別に今までの裏3作は続き物というわけではないんですが。
何か続いちゃってますね。これでようやく恋人関係になれた・・・かなぁ?
今回が一番恥ずかしいよこれ・・・、でもその割には何か大したことない。
・・・・・・、やっぱ、裏、向いてないかな?
いえ、人様の裏読むのはすっごい大好きなんですけど・・・。
今回初めて第三者視点で書いてみました。
どちらかというとアイバー寄り視点ですか?
視点の設定って難しいです・・・苦手です。
ごちゃまぜになってしまうお話にならないよう、頑張ってみました。
でも微妙に混ざってるかもなぁ・・・。
日記でどうしようとかいろいろ悩んでた下着の色は、文章中の通りです。
女の子らしい白とかピンクじゃやっぱりつまんないし彼女のイメージじゃないって感じだし。
かと言って黒とかはさすがにこの年じゃ何か似合わなくて。
えと・・・どういう話なのか自分でもさっぱです(--;)
理由ナシにただヤってるだけのお話が書きたかっただけで。
でも読み返してみると、うだうだと説明臭いですね・・・。
も一つ。
裏でどうしてもうまく書けないモノ。
・・・・・・・・・避妊具どうしてるんですか??
文章中で書くと何か冷めちゃう感じしませんか!?
いえ、だからと言ってつけないのを推奨してるんじゃないです!
っていうか、結婚前提とかじゃない限りダメですそれはいろいろマズいです!
・・・・・・実は、過去にそういう誤騒動を起こした私です。前サイトの日記参照です(うふ)
ヒロイン、実はお薬飲んでる・・・・・・って設定なんてつけたくないな(--;)
うん、すみません、ここんとこには触れないでくださいマジお願いします・・・。
未熟なものでうまい表現方法が見つかりません・・・(泣)
長くなってすみません!
つまりはこのヒロイン、エッチしたかっただけなんですね(笑)
・・・・・・すみません、あんまり冷めた目で見ないで・・・・・!
|