注意書き。




以前、本誌での衝撃の事実を知って勢いで書いたものに少し修正入れました。
もしかしたら・・・っと願って、期間限定で下げましたが、それはなかったので(泣)
改めてサイトにアップします。

ヒロインはある時期からアメリカから日本へ渡って捜査本部に入り、
竜崎、ライトとキラ事件を追ってました。
いろいろあってこの時点で、ヒロインと竜崎、既にカップル成立済みです。


そういう前提で、どうぞ。


























ワタリさんが死んだ。


・・・Lが死んだ。




・・・・・・・・・彼は、もういない。














I'm proud

























―――竜崎は死んだ―――




ぐらりと足下が無くなったような感覚。

両手で口許を覆ってその場に崩れ落ちた私。



あまりにも急すぎて・・・不可解な、二人の死。

死神なら何か知ってるかもしれないと、

ライトや皆さんが、いつの間にかいない死神を探して飛び出して行くのを、私は追いかけることもできなかった。





がらんと静寂が耳に痛いモニタールーム。


暖房は効いてるのに、何でこんなに震えてるの?





死んだ?


竜崎さんが?





・・・何の冗談なのそれ?






「ねぇ、何か言ってやってくださいよもう・・・」




そう呟いて、無意識的に彼の位置へ視線をやった。





だけど、いない。


・・・・・・いつも、あのモニター中央のチェアで画面を見上げていた竜崎さんがいない。






―――竜崎は死んだ―――





もう一度リフレインする夜神さんの声。




「・・・・・・し、んだ・・・・・・?」




震えが止まらない。



心拍数もおかしい。




・・・・・・ねぇ、何で、視界がこんなにぼやけてるの?





・・・・・・大丈夫か?」




私の顔を覗き込んできたのはいつの間にか戻ってきてたライト。

誰かに話しかけられたことで、止まっていた思考が回復する。



竜崎さんは死んだ。死んだ・・・・・・、











・・・・・・殺された?







私の本能はそれ以上の思考を許さなかった。

目の前のライトを押しのけて、モニタールームを飛び出した。

彼の制止らしき声も聞こえた気がしたけど、覚えてない。









・・・嘘だ。

そう嘘よ、こんなの有り得ない。










「うわっと・・・あ、ちゃん!?」


さん!!」




途中で、松田さんや相沢さんともすれ違ったけど、止まらなかった。

めちゃくちゃに回廊を走りぬけて。

本部内に竜崎さんが用意してくれた私の部屋に飛び込み、鍵をかけた。





「はあ・・・っはぁ・・・・・・っ」




全然呼吸がおさまらない。




苦しい。



息ができない。



ぼろぼろと涙も零れてくる。




「いや・・・・っ!や、だ・・・・・・!!」




座りこんで頭を抱えても、事実は消えてくれない。





私たちの朝は・・・・・・あの日に来たんじゃなかったの?




また暗闇の中?

・・・今度は私一人で?




―――前言撤回です。私は死にませんよ、さん―――




あの時、そう言ったじゃないですか。

それなのに。




「なんっ・・・で・・・!?りゅ、ざきさ・・・・・・っ」




泣きながら呼んだって、問うたって・・・返事はない。

























そして、今に至る。



クッションを抱えたまま、私は浅い眠りについていた。

何だかあたりが明るくて・・・ゆっくりと目を開いた。

腫れぼったい目をこすって顔を撫でると、まだ乾ききってない頬の涙の跡。




・・・・・・夢、じゃないのね。

昨日あったこと、全部・・・・・・本当だ。








夜の間、ライトや捜査本部の皆さんが心配して様子まで見に来てくれて。


でも私は、誰も部屋に入れることはできずに、ずっと泣き続けてたの。



こんなんじゃだめだ。


・・・・・・起きなきゃ。

皆に心配かけちゃったんだよ?



・・・だけど意識と裏腹に私はまだ起き上がれない。

一晩泣き通したら・・・少しは落ち着いていた。

悲しすぎてまだ胸が苦しいけど、いくらか事実を受け止められている。


・・・・・・違う、受け止めてるんじゃない。

まだ、ちゃんと理解できてないんだ・・・・・・きっと。



気を抜くとまた襲ってくる苦しさに胸をぎゅっとおさえる。









・・・・・・昨晩、暗い部屋の中で感情に任せて投げてしまった小さなガラスの花瓶が粉々に割れてるのがふと目に入った。









カーテンも引かなかったから、部屋の中にまぶしい光が差し込んでくる。



ま白い光を反射して、破片がきらきらと虹色に輝いてる。

ベージュ色の絨毯の上で輝く、ガラスの欠片。



粉々になっても輝き続ける・・・、美しい残骸。





・・・・・・それは、胸をしめつけられるほどきれいで、哀しい光景。




また目尻が熱くなったけど、ぐっと目を押さえて涙をこらえる。


























その日の昼。

ひどい顔を何とか整えて、モニタールームまで下りてこれた。

・・・心配そうに声をかけてくれたライトの顔をまともに見ることはできなかったけど。




少し出てくる、と言い残し、彼が搬送された病院を夜神さんに教えてもらって・・・一人でやってきた。





外来患者であふれかえってる騒がしい病棟から離れた、静かな棟。

誰もいない寂しい廊下をどこまでも歩いて。

案内してもらった部屋に、彼はいた。



何の気配も感じさせず、ベッドの上に横たわっている。






重い足を動かして・・・そっとベッドに近寄った。

不思議と・・・・・・心は落ち着いている。



・・・どうしたんだろう。

一緒に居たい、失いたくないと子供のように懇願して、それを受け入れてもらえて・・・・・・、

もう絶対に離れないと決めた人が・・・・・・もう応えてくれないんだよ?



・・・・・・おかしいよね、泣くこともできないの?




だけど彼の顔はとても安らかで・・・きれいだったの。

侵しがたい神秘的な雰囲気を感じてしまうほどに。




外傷一つなく、苦痛に歪んだ様子も見られない。



・・・・・・・・竜崎さん・・・眠ってるんですか?




少し揺さぶれば起きてくれそうな気がした。

でも、そっと触れてみた頬が氷のように冷たくて、やはりそれはないんだと思い知らされる。





あの穏やかな瞳が私を捉えることはもうない。

あの優しい声が私の名を紡ぐことはもうない。





あの温かい腕に、抱きしめられることも・・・もうないんだ。





彼のベッドの脇に膝をつく。


真白いシーツの上に肘をのせて、手を組んだ。




何の音もしない。

私の息遣いさえよく聴こえない。



いつの間にか視界がぼやけてる。



・・・・・・ああ、やっとわかった、彼は・・・・・・もう・・・、





目を閉じて・・・・・・様々な思い出が頭をよぎりながらも、考えをまとめる。






・・・・・・・・・・私の心は決まっている。
























本部に戻ると、今まで竜崎さんが座っていた席にライトがついていた。

何してるんだろう?

膨大なデータを開いて見事なスピードで処理している。


モニタールームに戻ってきた私の元気を出させるように、松田さんが努めて明るく声をかけてくれた。

ライトは私の姿を確認し、キーボードを叩く手を止めずに口を開く。




、いいところに戻ってきた。

もっといい圧縮ソフトはなかったか?

この調子じゃいつまでたっても終わらない」


「何を使ってるの?・・・ああ、それよりもいいのあるよ。ちょっと待ってて」




ライトの隣のコンピュータを起動させて、保存していた圧縮ソフトをライトのコンピュータに転送した。




どうやら、この捜査本部はあけてしまうみたい。

ここのシステムを全部コピーして、ライトの部屋を新しい捜査本部にするらしい。



・・・・・・と、いうことは・・・、ライトが新しいLになるの?



・・・やはり予想していた展開。

Lの名を継げるその器があるのは・・・、私たちの中ではライトだけなんだから。



ライトの作業を後ろから見ていると、松田さんがぽんと私の肩を叩く。




ちゃん・・・辛いかもしれないけど、元気出して。

みんなで必ず、キラを追い詰めよう」




・・・今だ。



「・・・・・・・・・ごめんなさい」


「え?」




すぅっと息を吸って。

皆に聞こえるように。




「・・・・・・私・・・、この事件を下ります」




それぞれの作業をしていた皆の視線が一斉に集中する。

ライトも作業を止めて振り返った。




「ごめんなさい私には・・・・・荷が重すぎます。

もう・・・どうしたらいいのかわからなくて。

・・・アメリカに父も母もいるので、これ以上心配かけたくないんです」




用意していたセリフを、それらしい顔で告げる。


松田さんの表情が曇るけど、すぐに優しい笑顔を向けてくれた。

裏表のない、素直な笑顔。

・・・・・・昔ならいざ知らず、今の私にはできないそんな笑顔。




「そうか・・・そう、だよね。

大丈夫?アメリカに帰れる?」


「大丈夫です、もう大分落ち着きました。

でも・・・これからも事件を追い続けるだけの気力は・・・なさそうです。

こんなんじゃ、皆さんの足手まといになってしまいます」




そう言うとライトは黙って立ち上がって、私の頭をくしゃりと撫でた。




「元気で、

必ず・・・・・・僕が竜崎の仇は討つから」




視線を合わせて、穏やかな口調でそう言った。

私の手をとって、しっかりと握手してくれて。




「・・・・・・うん。

ライトも、気をつけて。

皆さんも・・・・・・、今まで、お世話になりました」




とても冷たい、ライトの手。

優しく微笑んでるけど・・・、やっぱり何かおかしい。



彼だけは気づいてるのかもしれない。

ううん、気づいてたって構わないよ。




・・・・・・ごめんね、ライト。

私、あなたと一緒にはいられない。




皆さんには悪いけれど、私の中でライトへの疑いはゼロとは言えないから。

これは竜崎さんの受け売りなんかじゃない。


しばらく会ってなかったとはいえ・・・少なくとも、あなたのことをそれなりに知っていた友達として。

今のあなたは・・・何だかおかしいから。





だから・・・、私はあなたと離れて、捜査を続ける。




「本当に・・・皆さん、お気をつけて。

ありがとう・・・ございました」




一礼し、皆さんに背を向けてモニタールームを出た。
















あきらめない。



キラ事件は終わってない。



必ず、真犯人をあげてみせる。






それがもし・・・・・・友達のライトであっても。



きっと、然るべき処罰を要求するんだろう。







ねぇ、竜崎さん。





あなたの全て。


愛したこと、愛してくれたこと・・・、全部、大切な思い出です。











私は・・・、あなたと、そしてあなたを愛した私を誇りに思っています。












どうか安らかに。


あとは任せてください。








Lの名はライトが継いだとしても。




あなたの遺志は、私が必ず引き継いでみせます。